出勤途中に、登校中の小学生の姿が目に入る。色とりどりのランドセルを背に、服装も皆それぞれにおしゃれだ▼自分のころを振り返ってみる。ランドセルは男子が黒、女子は赤。で、なぜか皆、普段はいわゆる運動着姿で通学していた。寒い季節に、セーターやオーバーをその上に着ることはあっても、中は誰もが運動着だった。そういう規則だったはずはないと思う。ただ、それ以外の服装をする児童はおらず、ずっとそのままだったことを思えば、保護者から異論が出たということもなかったのだろう▼今考えれば、不思議な光景ではある。個人差(格差)が表面に出ず、親も子も楽だったのかもしれない。ただ、そこに文化の豊かさを感じることはできない▼当時は「一億総中流」という言葉が生まれた時代で、国全体が貧しかったわけではない。衣食が足りた後に、文化はゆっくり醸成するということなのだろうか。子らの姿にこんなことを考えた初冬の朝である。
片隅抄