県民俗学会の会長を務めた四倉町長友の和田文夫さんが存命だったころ、炭火ごたつの居間で話を伺ったことがある▼和田さんの口から出る民間信仰や伝説、風習など、今思えばそのまま録音しておけばよかったと後悔している。生活感漂う民俗学の塊のような和田さん自身が亡くなられたときの喪失感は大きかった▼市暮らしの伝承郷で今、『いわきの年中行事~正月行事~』が開かれている。園内5軒の古民家では水松様やショウガツサマ、ツル、オトコギといった正月飾りが神棚や土間に再現され、企画展示室では年末から大正月、小正月にかけての、年神様を家に迎え、家内安全や豊作を祈る正月行事が実物の展示と写真、解説付きで展示してある▼今では各家庭で見られなくなったものが多い。年配者が懐かしがるというより、遠い昔から伝承されてきた大事な正月行事を後世に伝えるためにも、若い人や子どもたちに見て、学んでもらいたい絶好の機会だと思う。