娘がまだ3、4歳のころだからもう20年近く前のことになる。毎晩寝る前に添い寝しながら絵本を読んであげた▼お手本は橋爪功さんや常田富士男さんの情感たっぷりな読み方だ。10分もしないうち、娘の目は開いたり閉じたりを繰り返し、やがてスースーと寝息をたてて夢の世界に入っていくのだが、一日の終わりの、穏やかで幸せなひとときだった▼北海道中央部の、剣淵町という絵本によるまちづくりを目指している小さな町を舞台とした『じんじん』という映画があることを知った。俳優の大地康雄さんが企画し主演している。テーマは〝絵本の力〟〝親子の絆〟だ▼2月22日に市文化センターで上映されるが、パンフレットにある父親の膝に乗って絵本を読んでもらっている幸せそうな小さな娘のワンカットが印象深い。離婚によって一度は切れた父と娘の絆を再び結び合わせたもの、それは絵本だった。近ごろにない心に染み入るテーマ。上映の日が待ち遠しい。