車で遠出する際、道の駅を利用することがある。見知らぬ土地での食事やお土産購入には申し分なく、デパートの催事場などで開かれる物産展のような感覚で楽しい。必ずあるといってもいい「ご当地ソフトクリーム」も目当ての1つになった▼だが、今ほど自家用車が普及しておらず、高速道路の整備も進んでいなかった幼少時、旅の手段は専ら鉄道だった。そして駅は、楽しい場所への入り口だった。出発する地元・平駅だけでなく、停車駅のホームや、到着した旅先の駅前の風景は、忘れえぬ思い出の1つだ▼大きな荷物を抱える親と一緒にホームへの階段を上り下りし、並んで列車を待ち、乗るときも降りるときも、車に比べればずっと手間はかかった。でも、その普段と違う面倒さもまたうれしかったのだ▼今、駅に行くと懐かしさがよみがえり、少しだけ日常から離れた心持ちになる。自身にとっては、道の駅がわくわく空間なら、鉄道の駅はほんわか空間である。