労働災害で、死傷者(死亡・休業4日以上)が一番多いのは「転倒」である。昨年の死傷者は2万6000人に近く、労災事故の2割以上を占めている▼十数年前までは「墜落・転落」「はさまれ・巻き込まれ」の方が多かったが、平成17年に「転倒」が1位となり以降、増加の一途。「墜落・転落」や「はさまれ・巻き込まれ」は、ある程度起こる業種が限定されそうだが、転倒はどんな業種、いや誰にでも起きうる事故である▼それゆえすべての職場で防止対策は急務だ。これまで危険を見過ごしてこなかったか、従業員の意識付けはされているか―職種を問わず考えなければなるまい。そしてそれは、職場以外、例えば家庭でも考える必要がある▼というのも、日常の生活においての不慮の事故による死者は平成22年以降、交通事故より転倒・転落事故の方が多いのだ。「ちょっと転んだ」では済まされない事故が身近なところでたくさん起きていると認識すべきである。
片隅抄