市内の小中学校などでは、春に行うところが多いが、「運動会」は秋の季語である。確かに9月から10月にかけては毎年、各地区で市民体育祭が繰り広げられている▼自身を振り返れば、運動は苦手だが、運動会は好きだった。競技そのものよりも、青空の下でのびのびと動いたり、大きな声で応援したりといったことが気持ちよかったのだ。もちろん、近所の皆が集まって囲む昼食も楽しみだった。身近な中に、いつもと違う興奮があるのが運動会だった▼今、市民体育祭を取材しても同じことを感じる。大人になれば人は誰も、日々の仕事や家事に追われ、余程意識をしていないと、あらためて何かに挑戦する機会など持てないものである▼そうした中、体育祭でこん身の力走を見せる〝お父さん〟たちの姿を見るとき、平日とは違う自分に開眼したような喜びが体から発散されているのが分かるのだ。スポーツの秋は、疲れた心に元気を取り戻す効果も大きいと感じている。
片隅抄