『この世にたやすい仕事はない』。芥川賞作家津村記久子の新著だが、誰もが一度は感じたことのある思いだろう▼忙しくて休めない時、努力しても成果が挙げられない時、障害があって計画が進められない時、そして収入が増えない時など、長年働いていればいろいろある。こうした場合に、この言葉で何とか自分を慰め鼓舞し、日々を送っている人は少なくないと思う▼ところで、作品の中には、変わった仕事がいくつか出てくる。路地を巡ってポスターの張り替えをしながら住民調査をする、森林公園の小屋に一日中詰めて広大な園内を管理するなど、仕事とは実に幅広いものだと実感させられた▼つまり仕事は周囲に求められて成立するものなのだ。だから「職業に貴賤はない」し、もし仕事に悩みや不満がある人がいたなら、自分のやっている仕事で、誰がどんなふうに助かっているかを考えてみるといいかもしれない。1年を振り返る時期にそんなことを考えた。