最近、懐かしい作風の漫画にお目にかかった。家人が総合図書館から借りてきた本の中にあった『失踪日記』。作者は昭和40~50年代のコミック雑誌でよく見かけた吾妻ひでおさん▼「鬼平犯科帳」「仕掛け人梅安」などの劇画はよく読む、あるいは見る。昨今の漫画にはまったく興味もないが、この1冊には惹かれた。作者自身がキャラクターで登場し、失踪からホームレス、配管工、あげくアルコール依存症での入院生活が綴られている▼昔なじんだ独特のタッチのせいか、違和感なく読み進んだ。なかなかの出来だと思ったら文化庁メディア芸術祭や手塚治虫文化賞のマンガ大賞、日本SF大会星雲賞ノンフィクション部門を受賞している▼この続編『逃亡日記』が読みたく同館に予約を入れたがまだ返却はない。漫画という表現法ではあるが、1人の人間がストレスなどをきっかけに陥る日常逃避、対人拒否、依存症などは現代社会で珍しいことではない。