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片隅抄

2016.03.18

先週11日の東日本大震災発生5年から1週間たった。各地で慰霊、追悼の催しが数多く行われるなど、あらためて犠牲者に思いを寄せ、復興への決意を新たにした▼あの災害をふり返り、厳かな心境でいたいが日々の営みについまぎれ「のど元過ぎれば」の状態にまた戻ってしまう。ここに落とし穴がある。常に警戒を怠らず、不測の事態に対応できる準備を抜かりなくしたい▼本紙16日付、戸部健一さん連載「続ファインダーがくもるとき」を一読した。カメラマンでもある戸部さんは震災発生年の秋、東京・新宿のあるギャラリーで東日本大震災写真展を開いた。その時訪れた中年男性とのやり取りが記されている▼「どうして死体を撮っていないんだ」と抗議する男性。逆に「どうしてそんなに死体を見たがるのか」と言いたかったが、ぐっとこらえた戸部さん。文のラストではある有名男優の死去にも触れながら切ない思いを綴る。はしゃぐな、とはこういうことだ。

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