今年も春の選抜高校野球大会が開幕した。「センバツ」といえば、まず春の高校野球を想起する人も多く、日本の風物詩の1つといってもいいだろう▼いわきの私たちにとって「センバツ」といえば、真っ先に3年前のいわき海星の出場が思い浮かぶ。震災後、復興の道を進む当地にとって、何より明るい出来事であった。街中が歓喜し、さわやかで力強い若者の姿に、勇気づけられた記憶がよみがえる▼今年は、いわき海星と同じ21世紀枠で出場した香川県・小豆島高の主将の選手宣誓が心に響いた。来春に学校が統合されることに思いをはせ「当たり前にあった景色がなくなる。その重みを忘れたくない。日常のありがたさを胸に、グラウンドに立つ」と誓った▼この言葉はきっと、自分たちだけでなく、震災の被災地を慮ってのものだろう。このように、遠く離れたところにも、われわれの思いを理解してくれる若い人々がいる。そのことを、何とも頼もしく感じた。
片隅抄