このところ書店コーナーに本田宗一郎、松下幸之助、田中角栄ら立志伝中の人物が語った名言集をよく見かける。変わったところでは吉田茂元首相の懐刀、白洲次郎もあった▼一読すると確かにそうか、などと思う半面、ある書家の一筆書きと格言めいた言葉のように一晩寝たら忘れてしまいそうで、あまり手にしない。それでもインパクトのある表紙を見た瞬間、購入したのが『三島由紀夫 行動する言葉100』(英和出版社)▼タイトル通り行動する作家として知られ、衝撃的な最期を遂げた。内容は生前に発表した書籍類からの抜粋。特に第1章生き方と行動では、「約束の本質は人間の信義の中にある。一人一人の人生にとって時間というものは二度と繰り返せない」とある▼要するに時間は守れ、ということ。作家にとって、この考えは徹底していた。そしてもう一つ「私は酒席で乱れる人間ほどきらいなものはない」。新社会人も知っていて損はない。
片隅抄