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片隅抄

2016.05.16

庭のアジサイが1輪開花した。沖縄からは入梅の報も届き、季節は確実に進んでいるようだ▼梅雨というと、アジサイとセットでカタツムリが想起されるが、本物のカタツムリを見たのは、いつだろう。子ども時分に、雨上がりの庭先に見つけたことも遠い記憶となった▼成人して、カタツムリと聞き、真っ先に思い浮かぶようになったのは、新美南吉の童話『でんでんむしのかなしみ』だ。皇后さまが、ある講演で「小さいころに聞かせてもらった話」として紹介されたと知ったのがきっかけだ。「悲しみは誰もが持っており、自分の悲しみは自分でこらえていくしかない」という示唆に、深い感慨を得た▼アジサイの開花を機に、読み返してみる。でんでんむしの「悲しみを持っているのは自分だけではない」という気づきは、それぞれの悲しみをこらえている多くの人がいるというメッセージでもあり、「だから生き抜いて」という励ましにも思え、そこに一筋の光が見えた。

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