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片隅抄

2016.09.06

日々言葉を扱う仕事をしている中で、日本語の美しさを実感することがある。新月に始まった9月の夜空を見て思ったのが「星月夜」だ。星月夜は、星の光が月のように明るい夜を指し、月夜のことではない▼もう一つ、最盛期を指す「書き入れ時」も由来を知ると、妙味を感じる言葉である。商人の世界で使われることも多いせいか、お金や客がたくさん集まるという感覚が強く、「〝掻き〟入れ時」と思っている人も少なくないようだ▼「書き入れ」は帳簿への書き入れを意味し、繁盛すると書き入れも忙しくなることから来た言葉だ。自身も若い時分には、がっさがっさと利益を掻き込む様をイメージしたこともあり、何とも気恥ずかしい▼こうした言葉の豊かさは、やはり春夏秋冬それぞれの特徴がはっきりとしている日本ならではのことだと思う。いまだ残暑が厳しいながら、ふと感じる秋風の中で、そんな思いを強くする。明日は「白露」。また一つ季節が進む。

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