少し前のことだが、知人との間で、絆は「強まるものか」「深まるものか」という話になったことがある。「絆」は、震災後、頻繁に触れるようになった言葉だが、「どちらだろう?」「どちらでもいいような気がする」という程度の認識だった▼最近になって『三省堂国語辞典のひみつ』(飯間浩明著)という書物に、その答えをもらった。先に結論を言えば、どちらも間違いではない▼だが本来、絆は「動物をつなぎとめる綱」のことで、ここから第一の意味は「人々をつなぎとめるもの」となる。この意味だと、強まったり切れたりはしても、深まるものではないのだが、第二の意味には「人と人との大切なつながり」がある▼この時点で絆は綱ではなく「綱の結びつき方」を指し、それゆえ「結びつきが深まる」との表現に問題はなく、「絆は深まる」ものでもあるとされる。同書では「人々の絆が深まるのは大いに望ましいこと」とまとめており、まさに同感である。