「あれをセーフにしたら野球のだいご味がなくなりますよ」と解説者は思わず言った▼プロ野球日本シリーズで、本塁上の素晴らしいクロスプレーがビデオ判定でアウトからセーフに覆ったシーンでのことだ。反論としての「機械の目を通して正しい判定が下されて何が悪い」という意見も間違いではない▼ラグビーでは〝テレビマッチオフィシャル〟、テニスやバレーは〝チャレンジ〟の新ルールができて、微妙な判定を機械に委ねるシーンを見かけるようになった。誤審がなくなるという点ではいいことだ▼これがあれば大相撲の「45連勝中の大鵬―戸田戦世紀の誤審」、プロ野球の「上田監督1時間19分の抗議」もなかった。ただ、軍配で土俵をたたいて勝負審判に涙の抗議をした行司や、「おれがルールブックだ」と名セリフを吐いた審判はもう出てこないのだろうか。ストライク、ボールの判定にまで機械の目が及んだらどうだ。冒頭の解説者のセリフをかみしめたい。