床一面に並ぶ約800枚の写真。表現は難しいが混沌、あるいは無国籍の感が漂う。被写体はまず、行き当たりで気に入ったものだけをカメラに収める▼通常の写真展では構図など、さまざまな点に気を配るものだが、ここには一切見当たらない。平・一町目の坂本紙店2階「ふれあいホール」で始まった小名浜在住の根本和彦さん写真展「虚数の時間~拡散する中心へ存在と非存在の間にたちのぼるもの」▼取材で見た時、記憶の一片がよみがえった。コロナブックス『作家の旅』寺山修二、萩原朔太郎編で使われたイメージ写真に重なったわけだがその模倣でもあるまい。根本さんの言う型にはまらず「起承転結」もない既成概念の破壊▼その背景には、若い時に感化されたフリージャズも影響しているらしい。街中の景色を切り取った作品には早朝か夕暮れか、判別つかないものもあるが想像は膨らむ一方だ。まずは一見お勧めしたい。会期は18日まで。