前にこの欄で、JRいわき駅前の市街地再編が進むにつれ、どこにでもあるような何の特色もないビルが立ち並び、歯が抜けたように駐車場が目立つ光景を嘆いた▼35年間、会社がある田町の一角から定点観測をしてきた目には、蔵構えの重厚な老舗や日本一の店舗密度だったはずの個性的な喫茶店の数々が懐かしい。蓋をされた〝古〟新川の存在を知る人はどれくらいいるのか▼ふつう田舎の駅には郷愁を感じるものだが、今の駅ビルはただの四角い箱だ。昔の駅ビル「ヤン・ヤン」に架かっていた漆黒の〝平駅〟の看板文字はどうなったのだろう▼そんな中、市内屈指の飲食街・田町の一角に「紅小路通り」などの案内板が立った。艶めいた名の通りかつて置屋などがあって、暮れ方になると芸者さんたちが通りを歩いていた。この通りにかすかな日が差したのは喜ばしい。磐城平藩当時もいいが、昭和の歴史も掘り下げたい。〝平〟らしさを少しでもとどめておくために…。