夏の甲子園を目指す福島大会を前にした最後の公式戦となるいわき地区高校野球選手権大会の熱戦を見ながらこの抄を書いている▼自分自身の数少ない運動部歴を振り返るとレギュラー経験がないだけに、球場ではさっそうとフィールド内でプレーする選手とは違う、背番号をもらえなかった部員たちに目が行ってしまう▼ベンチ横と外野のファールゾーンにはボールボーイがいる。彼らは同じフィールドで熱戦を体感できるからまだいい方で、スタンドから声を枯らして声援を送るもの、球場の外で受付や駐車場整備を任される部員もいる。球場の中の熱戦すら見ることができない▼応援席にはベンチ入りメンバーに選ばれなかった部員の家族もいるはずだ。その心情はいかほどかと思う。試合に出られない部員、それを応援する家族。諦めることなく野球を続けるモチベーションにこそ、高校野球の真価がある。それぞれの立場で、悔いのないひと夏を送ってほしいと思う。
片隅抄