朝の連ドラ「ひよっこ」で、主人公が実家の母や妹たちと頻繁に手紙のやり取りをするシーンを見て、昔を思い出すことがあった。進学のため上京した時の事だ▼ドラマの設定よりは20年近く後の事だから、時代背景にではなく手紙に関しての事だ。手紙の相手は、祖父。最低でも月に1回、今思えば、あたかも文通しているかのようだった。青森生まれの祖父の書く文章はかなり手ごわく、言葉のなまりの通りに文章が書かれているし、崩した文字を判別するのにも手間取った▼返事を出さないと催促されるし、帰省の際に小遣いももらえない。そんな不純な動機から始めたやり取りも、後に、なまりの文章も、崩した文字もすらすらと読めるようになっていた。そんなところに祖父の考えがあったのだろう▼今では「メール」が主流になり、書くよりは「打つ」方が多くなってきている。それでは気持ちまでは伝わらない。書いた文字には温かい気持ちが込められている。
片隅抄