龍が城の異名をもつ磐城平城の本丸跡隣に2階建ての龍が城美術館がある▼藩主安藤家ゆかりの武具や衣装、調度品などを展示していて、その中にいわきの戊辰戦争の史料も収蔵していたような記憶があるのだが、長く施錠されたままになっている▼昭和40~50年代、貴重な化石を相次いで発見した人たちが少年時代に入り浸った四倉史学館。解体後、そこにあった展示物もどこかで人知れず眠っている。子から孫へ受け継がれる個人所有の文化財に散逸の恐れはないだろうか▼市暮らしの伝承郷で「久之浜張子の世界」展が開かれ、作り手がいなくなった伝統工芸が見直されているが、それと同じ張子が市文化センター〝科学展示室〟の中にただ放置されているのを見ていたので複雑な気持ちだ。草野心平記念文学館で開催している「吉野せい展」の展示物も同様。これら市の貴重な遺産を、単発の展示会ではなく常に見られる本格的な博物施設がなぜないのか不思議だ。