このところの陽気のせいか、市内でもソメイヨシノが開花した。思えば1~2月にかけた寒波、今月半ばすぎの寒の戻りには参ったものの、そのつらさも忘れさせてくれる暖かさだ▼こちらの思い入れが強いせいか、新年度シーズンになると小欄で紹介する一文がある。すでに故人だが、直木賞作家山口瞳さんが記した「新入社員に関する十二章」。最近、山口さんの『ベスト・エッセイ』(ちくま文庫)がら刊行された▼著者は山口さんが勤務したサントリー時代の部下小玉武さん。エッセイには未収録作品もあり、ファンには興味深い。さてこの十二章、昭和40年発表。すでに50年は過ぎているが、サラリーマン社会の本質はそう変わってない▼「無意味に見える仕事も厭がるな」「出入りの商人に威張るな」「仕事の手順は自分で考えろ」など、新人のみならず何十年もどっぷりと漬かった現在の古参社員にも通用する。新年度始まりを前に再度読み返している。
片隅抄