小学生のころ、お札の匂いをかぐ変な癖があった。お札は愛用の小さな財布に入れていた。札入れではないので折り目正しく3回もたたんで…▼それを見た祖父から言われた戒めを今も覚えている。「そんなに折ったらな、お札も痛くて窮屈で、オメエの財布からすぐ出ていっちまわ!」。そのせいか、お札に恵まれない薄給の身。だから車を買うのに現金で100万円の札束を渡したときは胸が締めつけられた▼今はカード払い、キャッシュレスの時代だ。5千円札の顏が誰だかわかるだろうか。数字だけが右から左に動く世の中。何十億円もの年収を得ていたゴーンさんは、財布からお金を取り出してモノを買うことがあったのだろうか▼暮れの新聞は、プロ野球選手の年俸や新人選手の契約金の記事でにぎわう。スター選手なら5億や6億、まだ試合をしていない18歳の高校生にも1億円が提示される。庶民感覚からすれば気が遠くなるが、お金の重さは忘れてほしくない。