陸上競技の花形といえば何といっても100mや4×100mリレー。ドラマチックなマラソンや駅伝もそうだ。優勝や新記録がかかる走り幅跳びの最後の跳躍にも誰もが息をのむだろう▼ほかにも、平均台のようなハードルを合計28回、水濠を7回飛び越えながら走る3000m障害や10台のハードルと闘う400mハードルなど、想像するだけで呼吸困難になりそうな種目もある▼そんな陸上競技場に束の間、静けさが訪れるときがある。競歩だ。5000mならトラック12・5周、3000mなら7・5周を歩く。が、健康増進のための気楽な散歩ではない。疲れから集中力を欠いて、ついうっかり両足が同時に地面から浮いた(走る)状態になったら警告→失格となる▼レースを見ながらいつも、この種目を選択した選手とはどれほど実直で、おのれの強さを内に秘めた性格の持ち主なのだろうかと思ってしまうのだ。シーズン開幕は間近。今季の健闘を祈りたい。
片隅抄