リサイクルショップで偶然、映画界の巨匠市川崑監督の映画「東京オリンピック」のDVDを手に入れた▼市川監督らしい意外性に富んだ演出で『記録か、芸術か』の議論を巻き起こし、〝反対派〟があらためて記録としての映画をつくったという問題作だ▼冒頭のシーン、普通の感覚なら赤々と燃える聖火や華やかな入場行進、闘いのシーンのダイジェストなどを挿入すべきところが、何と巨匠は、大きな工事用の鉄球が古いビルディングを壊すシーンから始めた。国立競技場のスタンドを囲むようにはためく万国旗のポールにロープが風でぶつかる音や砲丸投げの選手が鉄球を手でならすピチャピチャという冷たい音をとらえ、マラソンで途中棄権する選手もクローズアップした▼走り高跳び、当時はまだベリーロールだった。男子の優勝記録は22メートル18。現在の世界記録2メートル45に遠く及ばないが、この半世紀の選手の努力とスポーツ科学、用具の進化に驚かされるばかりだ。