新幹線が運休し、電柱が倒れ、肝心の聖火も消えるほどの強風が吹き荒れ、青空を白い雲がところどころ覆った20日の宮城県東松島市上空▼飛行すること自体無理だっただろう。そんな悪条件の中、大空に五輪の輪を描く使命を負わされた航空自衛隊ブルーインパルスの精鋭パイロットたちは気の毒だった。その2日前には成功させていたのに…▼前回の64年東京五輪開会式で、国立競技場上空に描かれた五輪の輪は今でも伝説になっている。訓練飛行では一度も完璧な輪を描けなかったのが、秒刻みで式典のスケジュールが進むプレッシャーの中、本番一発で成功させた。前日の大雨が一転、<世界中の青空を集めてきたような>無風で雲ひとつない紺碧(こんぺき)の空も味方した▼今回の強風を新型コロナウイルス、ブルーインパルスを選手たち、聖火と輪を彼らの夢に置き換えると、いま東京五輪が置かれた状況が見えてくる。そろそろ本音で延期を考えるべきではないだろうか。