泥の感触に悲鳴を上げながら、苗を恐る恐る泥にちゃぷんと〝乗せて〟いく児童たち。つい「『ぐいっ』と押し込まないと根っこが浮いてしまう」と、余計な言葉をかけてしまう▼経験浅い先生はそんな姿を見ても何が駄目か分からず、完全スルー。指導される農家の方が後ほど植え直しをするのかと思うと気の毒になったが、気にするようすを微塵も見せず、根気強く助言を送る姿に感服した▼聞けば新ブランド米「福、笑い」が作付けできる〝選ばれた〟農家とのこと。抄子の稲作団体も同米の作付けを目指したが、条件厳しく断念しただけに、作付けに限らず地域貢献にも目を向ける姿勢に尊敬の念すら抱いた▼消費者の米離れに加え、コロナ禍で需要が急減し大量に米が余っているという。稲作を取り巻く環境は厳しさを増している。植え方を知らないのは仕方ないとして、先生方には稲の成長過程だけでなく、農家の苦悩や社会情勢もきっちり児童に伝えてほしい。
片隅抄