「オミクロン株は感染力はあるが毒性は低いんだろ。なら(自粛生活をしても)仕方ない。今まで通りに過ごすわ」▼年配の男性が大声で得意げに話すのを聞き、不快感を覚えた。行政が発表する新規陽性者のデータと向き合い、数の増減に一喜一憂する日々。無機質な数字の羅列と見えるかもしれないが、例えば新規陽性者の詳細。一覧に若年の男女、10歳未満の子が並ぶと「親子だろうか。子は無事か、親御さんも仕事を持って大変だろうに」と想像しては気が滅入る▼一番辛いのは重症者の増減。回復したならいいが、もしかして。肺炎を悪化させ、集中治療室で横たわり死を目前とした父の姿を思い出しては「無事であってほしい」との願いを強くする▼県は先日、感染により入院中の高齢者2人が亡くなったと発表した。事故でもそうだが、〝自分は大丈夫〟という過信が最悪の結果を生む。得体の知れない疫病と向き合っていることを、もう一度認識してほしい。
片隅抄