あすから市立美術館の企画展「松本竣介『街』と昭和モダン」が始まる。サブタイトルに糖業協会と大川美術館のコレクションによる、とあり2者が所蔵する優品をメインに同館も協力する▼大川美術館は、群馬県桐生市の実業家大川栄二が収集した国内外の作品を中心に平成元年、同市に開館した。中でもタイトルにある画家松本竣介の遺作15点以上を所有する。青色系を主体に都会の風景を独特のタッチで描き、戦後ほどなく亡くなっている▼もう一つの糖業協会は初めて知った。日本の製糖業者でつくる業界団体で昭和11(1936)年の設立で、ルーツは明治末期までさかのぼる。製糖と美術品の関連から元外相藤山愛一郎の名が浮かんだ▼財界出身で大日本精糖社長など数々の企業に関わったが、政治資金をねん出するため、書画骨董にいたる私財を使い果たした「井戸塀政治家」であった。政治の側面は別に、著名作家による日本近代洋画を堪能できる機会だ。
片隅抄