今年は50年の節目として、さまざまな出来事がクローズアップされた。時代はこちらも記憶にある昭和47(1972)年。政治、社会では田中角栄内閣の誕生と日中国交回復。地上戦の末、米国統治された沖縄の本土復帰など▼思い起こせば、世間を揺るがす事件も多かった。その一つにノーベル文学賞作家の川端康成の自死。神奈川県逗子市のマンションでガス管をくわえ、命を絶った。孤高の人物という印象が強いが、国政選挙に関わったこともある▼友人の作家今東光が同43年の第8回参院選に出馬、自ら選挙事務長を務め、応援演説も買って出たという。友情の証しかもしれないが、大衆の前で身をさらしての行動はよく分からない▼さて第26回参院選が公示され、新人5人の争いが激しさを増す。取材する中である候補者が他者から言われた言葉を引用した。「選挙は無関心でもいいが、無関係ではなくなる」と。投票の権利を無駄にすることはない。
片隅抄