今から29年前の1993年。和暦では平成5年。記憶にあるのは、天候不順による異常な冷夏だった。熱帯夜どころかひと夏、窓を閉めて寝たほどだった。国内の稲作にも大きく影響し、タイ米の輸入などで急場をしのいだ▼同年を思い出したのは、中東の国カタールを舞台に熱戦が繰り広げられているサッカーW杯。わが国においては、森保一監督率いるサムライジャパンの精鋭選手がグループ強豪2国を撃破。けさ歓喜の渦を巻き起こしたのは、ご存じのところだ▼その反面、脳裏に残る同国での悪夢。94年アメリカ開催のW杯を前にした、アジア地区最終予選の日本対イラク戦、いわゆる「ドーハの悲劇」である。放送日の夜、街で飲んだあと、自室で衛星放送を観戦▼残り数秒で同点ゴールを決められ、日本の初出場が露と消えた。酔った頭のまま事実を把握できなかった。あの出来事を共有した世代は留飲を下げたか、それとも教訓にするか。戦いはこれからだ。