予定時間を大幅に超えるほど、熱気に包まれた。長編アニメーション映画「すずめの戸締まり」を手がけた新海誠監督が、平の書店でサイン会を行ったが、出発ぎりぎりまでファンと交流した▼九州に住む17歳の女子高生・鈴芽が主人公で、災いを招く扉に鍵を掛ける「閉じ師」の青年・草太と出会い、謎の猫によって小さな椅子になった彼を助けながら、全国を巡っていく。フィクションながら、現実を思わせる美しさがスクリーンの中にあった▼東日本大震災と正面から向き合った作品で、双葉郡大熊町、双葉町をモデルにした場面も描かれている。現地を知るからこそ、それが本当の姿でないと分かるが、新海監督は空気感をそのままに、あえて架空の様子を描写したという▼劇中では、帰還困難区域の風景を前に、被災地に温度差のある発言が登場する。何も知らなければ、あそこは「綺麗(きれい)」なのだろう。風化と向き合って、災禍を後世に伝える大切さも垣間見えた。