高齢者が運転する車の暴走や死傷事故の報に接するたび、同じ高齢者として自身を戒めるようにしている▼まさにそんな事故だった。昨年末、97歳運転の軽自動車が福島市内の歩道を暴走し5人を死傷させた。運転操作の誤りだった。先日、この事件の裁判が行われ、被害者家族の悲痛な言葉が聞かれた▼昨年、全国で起きた75歳以上のドライバーによる車やバイクの交通死亡事故は前年に比べ33件増の379件、2年連続の増加となったことが警察庁の調べで分かった。事故原因の約3割がブレーキとアクセルの踏み間違いなどの操作ミス。近年は道路の逆走も加わり、事故のたびに高齢者の運転免許返上の声が高まるが、地方では車が生活の足となっているため、返却をためらう高齢者は少なくない▼今後は、免許返上への働きかけと併せて行政には食事の配達サービス、タクシーやバスの無料券の配布など、運転免許がなくても暮らせる環境作りが強く求められる。