「午前中は声の調子がいまいちでして、午後のお客様は幸せでございます」。先日、平中平窪の寺院で催された柳家一琴師匠の落語独演会を取材した。もちろん、本題に入る前の軽い笑いを取るまくらであり、真に受ける人はいない▼おおよそ寄席での演目は、噺家さんが楽屋入りした時に決まるという。身体に不自由な方がいた場合など、類似する内容を意識的に避ける意味もある。当日、一琴師匠の演目は事前告知はなく、午前中は「鈴ヶ森」「勘定板」「景清」▼午後が「強情灸」「義眼」「猫の災難」。シリアス、艶笑、こっけいなど客を飽きさせないテンポのよさと絶妙な間合いを交えた話芸を披露した。本市でも大会場での落語会は定期的にあるが、有志主催の小ぶりな会はこれだけだろう▼コロナ禍でさまざまな行事、イベントが自粛された。毎回楽しみにしていた「いわき寄席」も再開されていない。機会があれは、いわきゆかりの一琴師匠に出演願いたい。