NHK朝ドラの影響で、植物学者牧野富太郎が時の人となっている▼その富太郎博士が亡くなった翌年に生まれた私は、高校時代に風変わりな生物の教師に植物の授業を教わった。あるとき先生が、登山用シャツにニッカーボッカ―を履き、背中に大きなキスリングを背負って登校してきたのには驚いた▼今思えば日曜日を利用して野外観察に遠出し、月曜の朝、学校に直行したのかもしれない。その湯澤陽一先生が植物学、とりわけ苔類に精通した学者だったことを記者になってから知った。昭和9年生まれだからもうじき90歳になる。数年前、取材先で偶然お会いした▼「いわき植物誌」「福島県苔類誌」などの著書に加え、今年は「福島県の万葉植物たち」を出版するなどお元気そうでなによりだ。卒業して半世紀がたつが、恩師の健在ぶりを確認できて教え子としてはうれしい限りだが、高校時代、いわきの牧野富太郎先生にもっと植物の話を聞いておけばよかった。