もう40年以上前のことだ。アメ横の人混みに驚き、興奮冷めやらぬまま、その足で浅草に向かい風神雷神が守護する浅草寺の総門、雷門と書かれた赤い大提灯を仰ぎ見た。スケールの大きさに、ただただ仰天した▼久方ぶりの来訪。昨今の界隈は定番の仲見世通りに加え隅田川のオープンカフェ、新しい街のシンボル・東京スカイツリーと実に見所が多く、とてもじゃないが1日では回りきれない。雷門もふと境内側の仏像を眺めると、平櫛田中作の天龍像。思わぬ発見に素っ頓狂な声が出た▼境内をぶらり歩くと次は耶麻郡熱塩村(現喜多方市)出身の明治時代の社会事業家で、〝菩薩の化身〟とまで称賛された瓜生岩子像が。調べると、渋沢栄一らが明治34年に建立した。近代日本初の女性像という▼先日、渋沢と交流があり明治・大正期のいわきの政治経済をけん引した白井遠平と安田講堂の繋がりを聞き、無知の知を痛感したばかり。幾つになっても学ぶことは多い。
片隅抄