古ぼけた通行証がいまも手元にある。発行者として、原発事故に対応し、現職のまま亡くなった浪江町の馬場有町長の名前が入っている。事故の翌年に初めて警戒区域に赴いた際に使ったものだ。でこぼこの国道6号や、時が止まったままの沿岸部、防護服を着た警察官など、どれも忘れられない▼J2いわきFCは、マスコットキャラクター「ハーマー&ドリー」が、ホームタウンを訪ねる動画を制作した。題して「浜の光の届く場所」。3本目のラストでは、大熊町の双葉病院そばにあるバリケードの前に立ち、隣には帰還困難区域を伝える看板が立っていた▼あれから13年が経っても、変わらない現実がある。大倉智社長は11日、「少しずつ報道が減っていると感じるが、自分たちは震災によって発足したクラブ。これからも共に歩んでいく」と強く語った▼復興から成長へ。いわきFCがある当たり前の日常が、浜を照らす光となる。強い信念をこれからも見守っていきたい。