図案家とは、美術工芸品や一般工作物に必要な図柄を考え出し、それを絵に書く人という。デザイナーと言ったほうが分かりやすいだろう▼図案という言葉が一般に広まったのは、工芸品の下絵などを生み出す創作行為が始まった明治以降とされる。工芸学校などで専門学科が誕生し、図案に従事する人材育成が開始されたことで、図案家という職業が認知されるようになった▼昭和62年7月6日付の弊紙に、いわき地方で最初の図案家で、平町出身の鈴木百世氏を紹介する原稿が掲載された。寄稿したのは炭田研究家の猪狩勝巳氏。知人の郷土史研究家から譲り受けた常磐炭田鳥瞰図で知り、「記録にとどめるべき人物である」と独自に調べを進め、長男から聞いた話をまとめた。原稿に目を通し孫が図書館に寄贈した本物を実際に見て、その精巧さに驚いた▼戦前・中の文化経済を知る大変貴重な資料だ。図書館では精査し、後ほど企画展を催すという。今から楽しみだ。