過去最多の9人が立候補した自民党総裁選。うだるような暑さが続く中、政局も熱く混迷した戦いに入ろうとしているが、少し多すぎはしないか▼従来なら派閥の長が、戦いの矢面に登場するのだが、解消を機にわれもわれもと出馬した。このうち最年少の候補者は、期待度も高いが「知的レベル」を持ち出されるなど、首相の座に直結するだけに少々心配だ▼過去の総裁選では、1987(昭和62)年の中曽根裁定が思い出される。それまで政界で隠然とした影響力を保持した田中角栄元首相が病で倒れたあと、当時の中曽根康弘総理・総裁が権謀術数の果て、選挙ではなく自らの後継者を指名したことにあった▼とすれば、現総裁にそれだけの政治力がないのかと思うが、結局のところ戦わずして権力を手にすることはできない。結果、国益を担う立場に就けば、そのプレッシャーは存外に重いことも承知の上であろう。顧みて昭和の政治ドラマが懐かしい。
片隅抄