2025.01.31

「この妓どこのお座敷に侍つてもお客同志の會話の内容などは口を割られても秘密を守る志操堅固さが、彼女の美點といへやう」。趣味は映画、旅行。得意は長唄、端唄とある▼ひまわり信用金庫本店営業部で開かれている「たいら花街戦前の芸妓展」で吉野家五郎さんを紹介する史料の一文。１９３２（昭和７）年７月発売のコロンビアＳＰ盤「磐城盆踊り」を唄い、Ｂ面は幇間の木村榮作さんとの解説▼炭鉱、漁業、流通など戦前の平は商都にふさわしいにぎわいがあり必然、夜の宴会、会合もさぞかし華やかだったと想像できる。お座敷での踊り、三味線、長唄など雰囲気を盛り上げ、旦那衆をもてなす技量を有した▼先の紹介文のように守秘義務も問われた。時には商談の場に同席することもあり、客同士の話す内容は漏らしてはいけないルールが存在した。現代ではこれが簡単に破られ、スキャンダルとして流布される。もっとも羽目を外すにも限度はあるが。