「V音の表記には『ヴ』ではなくB音またはW音を用いる」。原稿を書く際の虎の巻・記者ハンドブック「新聞用字用語集」では、外国の人名・地名の書き方について事細かに載っている▼すると「『四季』より春」で知られるVivaldiはビバルディ、「ボレロ」が有名なRavelはラベルといった具合だ。音符が読める末端の身としては、何とも落ち着かない▼先日のNHK交響楽団いわき定期演奏会で、メインで素晴らしい演奏を披露した「交響曲第8番」の作曲家は、新聞表記ではドボルザーク。しかしプログラムではドヴォルジャーク▼こうした違いに関して、いわきアリオス音楽学芸員の足立優司氏に教えを請うたことがある。演目紹介では原語を大切にしつつ、時に新たな読み方を提唱するという。ドヴォルジャークはチェコ語の発音に添っている。一般的な分かりやすさも大切だが、ちょっとした差異をきっかけに、音楽の持つ背景を知ってもらえれば。
片隅抄