先週来から列島を包んだ寒気団も去り、ここ数日は暖かな春風が吹いている。こたつで寝入り早朝目が覚めたころ、外の景色は枕草子の一節「春はあけぼの…」を思わせる▼この時期が巡るたび、3・11東日本大震災を思わざるを得ない。発生から14年、振り返れば震災当日は勿来地区での中学校卒業式を終え、次の取材先に向かう途中、信号待ちの時に強い揺れに襲われた▼落ち着いたころ、瞬間的に津波襲来が頭に浮かび、周囲の高台から海の方角に目を向けたが、変化はなかった。ここで近くの岩間・小浜海岸に行っていたら約30分後、どうなっていたか分からない。翌日朝、そこで見た惨状は想像を超えたものだった▼今年も市内各地で震災追悼慰霊式が行われ、こちらは豊間地区に足を運んだ。海沿いの慰霊碑の前に立ち、刻まれている犠牲者、集落の被害状況をつぶさに読んだ。平穏な生活を送ってきた人たちが波にのまれた事実。思い出させる春は残酷だ。