毎回毎回がまさに一発勝負で、緊張との戦いだった。スポーツの現場なら、なおさら。鼓動は早まり手に汗にじむ。デジカメに移ると緊張感は萎え、「渾身の一枚」にかける情熱は薄れかけているように思える▼フィルムのコンパクトカメラが若者の間で流行っている。理由は「エモい」から。デジカメや一眼レフと違い内臓のフラッシュで、絞りやシャッタースピードが調整できないことが逆に「ならでは」の味を出している。確かに昭和レトロな、エモーショナルな写真に仕上がる▼フィルムは一期一会で思い通りに撮れないことも魅力。ただ、当時を思い出すといまだ冷や汗が流れる。現像したら真っ白け。後ろにピントが合い、シャッタースピードが合わず、幾度も写真部や上司に怒鳴られた。間違いは許されない。まさに一球入魂の時代だった▼一枚一枚にこだわりを込める。我々世代は当たり前のことだが、知らない世代に伝えても、どうもピンとこないらしい。