春には程遠い冷たい雨の中、新年度が始まった。入学、入社式など新たな社会に一歩を踏み出すセレモニーが行われている。未知の世界の扉を開く不安もあるだろうが、胸を張って歩を進めてほしい▼今年も大手酒造メーカーによる新入社員を激励する新聞広告が掲載された。古くは作家山口瞳さんから始まり、伊集院静さんに移り、現在は脚本家三谷幸喜さんが筆を取っている。「人生の扉」と題し、大学での演劇活動を振り返り、当時の心境を「八方塞がり」と称している▼若かりし頃に限らず誰でも思うようにはいかないが、その中で一瞬の転機が訪れることがある。結果的にあとで気付くのだが。こちらの経験からいえば、つらい仕事も逃げずにやってみることだろう▼30代、そのストレスから帯状疱疹にかかったこともある。背中、脇腹にミミズ腫れが生じひどい思いをした。半面得たものは、今に続く人とのつながり。公私ともに自分の財産になっている。