大正4年に開業し、百年以上変わらぬまま小川の玄関口として愛されてきたJR小川郷駅の木造駅舎が取り壊され、1年半の月日が過ぎた▼新しい駅舎の前を通るたび、胸が締め付けられるような辛い気持ちになる。草野心平をはじめ串田孫一ら心平を慕う文人が利用するなど文化価値のあった往時の情景が懐かしい。街の宝の一つが消え、超少子高齢化が人口減を加速させる。中山間地域の小川は待ったなしの状況だ▼小川郷駅から徒歩で数分の敷地に来春、民間設営の公園と商業施設、分譲地が生まれる。分譲地開発には公園設置の義務があるが、整備される公園面積は義務の比ではない。若い世代に愛される、賑わいを生む場所であってほしい、との事業者の願いが込められた▼その思いは、失意を抱いていた住民の気持ちを明るくさせた。小川ではほかにも新たな宝の発掘と発信が始まった。オガワビレッジも旧駅舎のように誰からも愛される場所に成長してほしい。
片隅抄