大久に伝わる昔野菜「大久じゅうねん」の定植作業を取材し、じっくり苗を見た。市農林水産部が発行した「いわき昔野菜図譜」で葉や花を確認していたが、やはり間近にすると印象が変わる。シソの若い葉にそっくりだ▼数年前まで猫の額ほどの畑で作業をしていた。ナスやトマト、イチゴなどを作っていたが、植えた記憶のない幼葉が自然と出てきた。母が家庭菜園で育てていたからすぐピンとくる。シソだ。ムクドリやスズメなどの野鳥がシソの実を好んで食べ、運ぶことがある。鳥の種子散布だったのだろう▼あらためて調べると、じゅうねんはシソ科属の一年草。ならば放っておけば花が咲き、乾燥させれば種が取れると思い、安直な考えで生産農家に話を振ると、「いや、栽培には手間暇かかる」▼土壌改良から追肥、風にやられないよう背丈を抑えるために若い葉を摘む。土質で収量も左右される。失礼な物言いを恥じるとともに、農家の大変さに恐れ入った。