いわき昆虫記
ふるさと自然散策・いわき昆虫記115 ―フタホシヒラタアブ―
文と写真・ 鳥海陽太郎(いわき地域学會会員)
蜂に擬態をした送粉者
晴天のあたたかな陽気に誘われて、平四ツ波地内の「いわき市フラワーセンター」へ出掛けた。標高160㍍ほどの丘の上にあるためか、園内に吹く風が少し冷たい。春を迎えて咲き始めた花々にはどんな昆虫が来ているだろうか。
いち早く黄色い花を開いたロウバイやマンサクなどの花々が咲き競っていたが、昆虫の姿が見当たらない。何か寒さに強い小さな虫が花の中に潜んでいるかもしれないのだが。
昆虫を見つけたのは、地面近くで鮮やかな黄色い花を咲かせていたヒメリュウキンカの花の上。体長およそ1㌢の蜂にも似た小さなハナアブ科の「フタホシヒラタアブ」だった。
黒い腹部にある3対の太い黄色の紋が特徴的で、ひときわ目立つ。頭部はハエに似ていて、黒光りする背中が金色に輝く。胸部には透明の前翅1対があるが後翅は見当たらない。花から花へと飛び回り、高速で羽ばたくホバリングからの急発進などの高度な飛翔能力は、4枚翅から2枚翅へと進化した結果なのだとか。
フタホシヒラタアブのとまっていたヒメリュウキンカの黄色い花は、カップ型の花の中に太陽光を集めた熱で虫を誘うフクジュソウにも似ている。温かで居心地のいい空間だったに違いない。天敵から発見されやすい場所でもあるが、毒針を持つ蜂に擬態して身は守られている。
今回の観察では、成虫は花の蜜は吸わずに花粉だけを摂取していた。花粉を少し食べても、花粉を運ぶなら、送粉者として花の受粉を担っていることになる。さらに幼虫期は植物に寄生するアブラムシを食べて育つから、花卉や果樹の栽培には有益な昆虫に違いない。
(写真:ヒメリュウキンカの黄色い花に飛来していたフタホシヒラタアブ)