福島県いわき市のニュースやお悔やみ情報をお届けします

いわき昆虫記

ふるさと自然散策・いわき昆虫記118 ―ヒメツチハンミョウ―

文と写真・ 鳥海陽太郎(いわき地域学會会員)

地面を徘徊する有毒昆虫

 三和町地内の水石山公園へ出掛けた。暖かな低地とはうってかわって、標高735㍍の山頂付近は寒い。突然の遊歩道での2頭のアナグマとの接近遭遇には驚いた。クマ対策の熊鈴も、吹き荒れる風の音の中では全く効果がないようだ。
 風の穏やかな森の中の小道へとルートを変えた所で、木陰の地面を歩く昆虫に出会った。体長2㌢ほどの大きさで、全身が黒光りしている。翅が短く、腹部がむき出しになっているのが特徴的で、巨大な女王アリのようにも見える。ツチハンミョウ科の「ヒメツチハンミョウ」だった。カブトムシなどのコウチュウ目に分類されている昆虫だ。
 そっと触れてみたら体は柔らかく、瞬時に擬死して横向きに倒れた。この時に脚の関節から分泌されるカンタリジンは猛毒で、数十ミリグラムで大人の致死量になるというから、餌を探し歩くアナグマからも身は守られていたのだろう。
 昆虫学の先駆者ファーブルの昆虫記(岡本大三郎訳)では、「ツチハンミョウのミステリー」という表題のもと、ツチハンミョウのスリルに満ちたサバイバル生活を綴っている。福岡伸一は、4000匹のうち生き残れるのは1~2匹という壮絶な幼虫の生活を、「ツチハンミョウのギャンブル」とした。
 土の中で卵から孵化した1㍉ほどの小さなツチハンミョウの幼虫が、アザミなどの花の先端まで這い上り、飛来した昆虫にしがみつく。幸運にもハナバチの雌に乗り移れた者だけがハナバチの土中の巣の中にたどり着き、ハナバチが産み付けた卵とその幼虫のために集めた花粉団子を食べて育ち、成虫になるのだという。まさに生き残りを賭けた綱渡り人生だ。
 小玉川の源流域で出会ったムカシトンボの命も、永遠に繋がれますように。
(写真:木陰の路上を歩いていたヒメツチハンミョウ)

PR:全国各地から厳選した「旬の魚」を吟味しすべて「生」からお造りいたしております

カテゴリー

月別アーカイブ

海産物加工品の製造販売 丸市屋
More forecasts: 東京 天気 10 日間

関連記事

PAGE TOP