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いわき昆虫記

ふるさと自然散策・いわき昆虫記121 ―スキバホウジャク― 9月9日掲載

文と写真・ 鳥海陽太郎(いわき地域学會会員)

透けた翅を持つ昼行性の蛾

 三和町上三坂地内の「芝山自然公園」(芝山山頂標高819㍍)へ出掛けた。明るく開放的な「芝山猿子平」へ足を踏み入れると、1羽の大型猛禽が上空を旋回して飛び去った。タカ科のクマタカに見えたのは妄想か? 木々の高所では、秋の蝉チッチゼミが鳴いている。
 目の前に広がる草原には、ワレモコウやツリガネニンジンなどの花々が咲き、コオロギが秋の音色を奏でていた。マツムシの鳴き声は聞こえなかったが、マツムシソウの群落が保護されている草原の一角で、珍しい昆虫に出会った。
 薄紫色をしたマツムシソウの可憐な花にとまる1匹の昆虫に気付いて、一瞬ギョッとして立ち止まったのは、大きな蜂に見えたから。よく見れば、体長3㌢ほどの「スキバホウジャク」だった。
 蜂に擬態しているが、スズメガ科ホウジャク亜科に属する昼行性の蛾である。漢字では「透翅蜂雀」と書くので、和名の由来が判りやすい。幼虫は、スイカズラ、アカネ、オミナエシなどの植物を食べて育つ。成虫は、花の蜜を吸い、明るい草原が棲みかになっている。
 ホウジャクの仲間は、ハチドリのように高速で羽ばたきながら、花から花へとせわしなく飛び回り、吸蜜する。花の上にじっととまって吸蜜している姿を観察出来る機会は、滅多にない。背中の丸い紋が特徴的だが、蜂に擬態ならば茶と黄のストライプ、天敵から身を守るには1対の眼状紋が効果的と思えるのに、1つ目なのはなぜだろう?
 阿武隈高地の芝山の草原に保護されたマツムシソウ(絶滅危惧ⅠB類)と、稀少なスキバホウジャクの組み合わせは、貴重な写真が撮れたことになる。

(写真:マツムシソウの花で吸蜜中のスキバホウジャク)

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