いわき昆虫記
ふるさと自然散策・いわき昆虫記126 ―ウスタビガ(繭)― 2月9日掲載
文と写真・ 鳥海陽太郎(いわき地域学會会員)
枯野で目立つ黄緑色の繭
平四ツ波石森地内の雑木林を散策した。丘陵の南向きの斜面には、大きなアカマツとクヌギやコナラが生え、薪炭林として活用されて来た面影がある。林の陽だまりは冬でも暖かく、快適に虫探しが出来る場所だ。樹間をアカゲラやコゲラ、シジュウカラやメジロが飛び回り、林床には小動物の気配も。夏にはカブトムシやクワガタムシの見られる生物多様性に富んだ豊かな里山とみた。
アカマツの根元のテントウムシや朽木の中のスズメバチなど、越冬昆虫の姿をイメージしつつ、ふと見上げたところで目にとまったのが、ウスタビガの繭(まゆ)だった。葉を落とした木の枝から、幅2㌢、長さ4㌢ほどのひときわ目立つ鮮やかな黄緑色をした袋状のものが柄で固定されて下がっていたのだ。
チョウ目(鱗翅目)ヤママユガ科ウスタビガの繭で、私の中では印象的な冬の風物詩のひとつ。懐かしく思えたのは、近年目にする機会が少なくなっていたからか。ウスタビガの和名の漢字は2種あり、「薄手火蛾」は薄い提灯(手火)のような蛾を意味し、「薄足袋蛾」は薄い足袋のような蛾とたとえたもの。いずれも独特な繭の形を見立てて名付けられた。
幼虫はクヌギやコナラなどの葉を食べて育ち、木の枝先などに樹々の葉と同じ色をした繭をつくる。その中で幼虫は蛹となり、紅葉のシーズンになると繭の中から羽化した成虫が出て来て、雄は褐色、雌は黄色の10㌢ほどの大きな翅を伸ばし、繁殖活動が展開される。
今回は、冬枯れの野に残された成虫が出た後の空繭を記録したが、晩秋の発生期には、立派なウスタビガ成虫の生き生きとした生態を写真に収めたい。。
(写真:葉を落とした木の枝に付いていたウスタビガの繭)