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福島第一原発の処理水 初日200トン海洋放出 中国は水産物を全面禁輸に
東京電力福島第一原発の汚染水を浄化した後の処理水を巡り、海洋放出が24日に始まった。午後1時3分、福島第一原発の免震重要棟内の遠隔操作室で、運転員がポンプを起動させ、処理水は約1kmの海底トンネルを通じて、海に流された。
海洋放出は、処理水に残る放射性物質トリチウムの濃度が、国の基準の40分の1(1リットル当たり1500ベクレル)未満になるよう、海水で希釈してから実施する。初日の24日の放出量は約200トンだった。
本年度は、処理水を貯蔵するタンク約30基分に相当し、全体の約2・3%にあたる計約3万1200トンを、4回に分けて海に流す計画で、最初は10基のタンクに入っている処理水約7800トンを海洋放出する。1日平均で流す量は約460トンとし、トリチウム濃度は同190ベクレル程度まで下げる。
県漁連の野﨑哲会長は「海洋放出に反対であることは、いささかも変わりはない。国家的見地から国が全責任を持って判断したとはいえ、本県の漁業者の不安な思いは増しており、安心して漁業を継続することが唯一の望みである」とコメントを出した。
また海洋モニタリングや安全性の確保、消費者の安心を得ていく取り組み、漁業者に対するフォローアップとともに、岸田首相の「今後数十年にわたろうとも、政府が全責任を持つ」との約束について、着実に履行するよう要請し、すでに発生している風評被害に対しては、可及的速やかに対応するよう強く求めた。
海洋放出にあたり、国際原子力機関(IAEA)は福島第一原発に専門家を常駐させ、安全性の評価を続けるとしており、グロッシ事務局長も「私たちの存在によって、安全かつ透明性の高い方法で、海洋放出が実施されているとする信頼醸成に貢献する」との考えを示した。
岸田首相は「日本政府として、緊張感を持って全力で取り組んでいく」と述べ、東電の小早川智明社長は「強い決意と覚悟のもと、社長である私が先頭に立って対応したい」と語った。
一方で中国政府は冷凍や乾物も含め、日本産の水産物の輸入を24日から全面的に停止した。中国外務省の汪文斌副報道局長は「国際社会の強い疑念と反対を無視して、日本は汚染水の海洋放出を一方的に開始した」と非難した。
この動きに対して、岸田首相は「外交ルートで中国側に、即時撤廃を求める申し入れを行った」と明らかにした。小早川社長は「外国政府の禁輸措置で、被害が生じた際も適切に賠償する」と話している。